読書会に参加するのは久しぶりのことだった。
神戸外大で指導されていた先生を中心に、資本論から落語まで、様々な
分野の本を取り上げて議論する読者会が、コロナ禍で中断されたままだったので、ドキドキしながらの参加だ。
私にとっては初参加の読書会のことは、このDジャーナルのお知らせ記
事で知って参加してみたいと思った。神戸出身の花森安治さんの「灯をと
もす言葉」(2013年初版)が課題図書とい
うことも背中を押してくれた。
前日にようやく手にした本は、どこからでもあっという間に読めて、そし
て、キャッチコピーのような短いフレーズは、時に詩のようでもあり、ぐ
いぐいと心に刺さってくる。戦後から昭和40年代くらいに書かれた花森さ
んのメッセージは、今でも、今だからこそ響くことも多い。
1948年に「美しい暮しの手帖」(のち「暮しの手帖」には改題)を
創刊。取材執筆から表紙装釘、誌面のデザインまで自ら手がけた。
そのデザインは、シンプルで可愛いのに、おしゃれで今でもその斬新
さに目を見張る。そして何より、広告料をもらわないで、商品のモニター
を行い、読者に洗濯機や掃除機やストーブなど商品についての知識を提供し続け、雑誌の革命児だった「暮しの手帖」は、75年経った今でも色褪せない。
この読書会の場所を提供してくださったのは、板宿の「井戸書店」
の3代目店主、森さん。〝感動伝達人〞としての書店を理念とされてい
て、街中から消えつつある古き良き時代の街の本屋さんとして、いろん
なイベントをされている。
ふらりと立ち寄って、心の底から感動する本に出会えそうな予感のする
本屋さん、私もここで、心に灯りがともった。
井戸書店
2023-11